5.著書

 これまでに単著で6冊、共著で3冊、合計9冊の本を出版しています。日本語教員を目指す人を対象とする書籍が主なものですが、それらに加え、一般の方に向けた新書なども出版しています。また、著書をテキストとして使っての授業動画を作成しています。興味のある方は、「6.講義の動画」から視聴してください。以下、私の著書について、最新のものから紹介していきます。

 

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<単著>

1.『日本語教師をめざす人のためのスモールステップで学ぶ文法』(スリーエーネットワーク)2023年

 日本語教育能力検定試験に合格するために書き下ろした日本語文法のテキストです。2024年度から始まる国家試験である「日本語教員試験」にも対応しています。初めて日本語文法を学び始める初学者でも無理なく進めることができるように見開き2ページに文法解説と練習問題を収め、少しずつ文法知識を深められるように工夫しています。執筆にあたっては過去20年間の検定試験を分析し、どの分野から出題されているか徹底的に調査しました。その結果をもとに、品詞分類から始まり、学校文法と日本語文法の違い、主題、自動詞と他動詞、ボイス、アスペクト、テンス、モダリティ、複文、談話などを解説しています。練習問題を検定試験の疑似問題とすることで、実際の検定試験の問題にも違和感なく取り組むことができます。初学者だけでなく、文法の学び直しを考えている現役の教師にも活用していただけるものと期待してます。(今回のイラストのキャラクターはフクロウです。私の家の前の木にも棲んでいて夜になるとよく鳴きます。)

 

2.『日本語教師のための入門言語学-演習と解説-』(スリーエーネットワーク)2016年

 日本語教師養成講座で言語学の講義を担当するようになり、多くの受講生がその内容の難しさに苦しむ姿を目の当たりにするようになりました。どのようにしたら、興味をもって理解できるようになるのか、試行錯誤が始まりました。講義中の質疑応答、講義後の詳細なアンケートを通して、学習者のわからないところがよくわかるようになりました。そこから、単なる言語学の理論の説明ではなく、私達の日常生活と結びつけた解説にし、イラストや図、表を多用した、わかりやすいテキストの作成を試みました。こちらの書籍も多くの日本語教師養成機関でテキストとして採用されています。現在7刷となっています。

 

3.『多文化共生のための異文化コミュニケーション』(明石書店)2014年

 『異文化理解入門』は主に大学などで使うテキストとして書き下ろしたものです。しかし、その中で紹介している具体例は、私の海外生活の中で遭遇した体験談のごくごく一部だけでした。さらに、私の異文化理解教育の中で得た多くの人の具体例が頭の中にあふれていました。読者の方にもっと多くの異文化にまつわる逸話を実践的に伝えたいと思い、それをエッセイ風の読み物としてまとめたのがこの書籍です。この本は社会的な貢献という意味においては、私の中で非常に大きな地位を占めるようになりました。その理由は、この書籍の内容が様々な教育機関で使われるようになったからです。関西の大学では入試問題として採用されました。高校の国語の教科書では2つの異なる出版社の教科書の中で著作内容が使われています。また、大手予備校の問題集でも使われています。他の著作と比べ、発行部数はそれほど多くはありませんが、社会的な貢献度においては飛び抜けた存在となっています。

 

4.『異文化理解入門』(研究社)2013年

 静岡大学で教鞭を執るようになってから、日本語文法、言語学に加えて、異文化コミュニケーションが研究分野に加わりました。異文化コミュニケーションの研究では、私のブラジル、アメリカ、オーストラリアでの滞在経験が大きく役に立ちました。そして、そのような経験をもとに、理論と実践的をむすびつけるテキスト『異文化理解入門』を完成させました。出版と同時に日本図書館協会の選定図書に指定され、日本中の図書館に配本されるという名誉に預かりました。このテキストは留学生用のテキストとしてだけでなく、大学の教養科目の異文化理解を教えるテキストとしても多くの大学で採用されています。平成27年度には日本留学試験の試験問題として内容の一部が使用されました。また、出版元である研究社ではテキストの採用教員を対象とするワークショップを毎年開催し、日本全国から参加者が集まり、テキストに掲載しているシミュレーション・ゲームの実践方法を紹介しています。13刷ですが、改訂版が2024年に出る予定です。

 

5.『日本人のための日本語文法入門』(講談社現代新書)2011年

 大学院で日本語文法を学んだときに、学校文法と日本語文法の大きな違いに驚きました。言語学の視点から見ると、学校文法は矛盾だらけです。しかし、日本語文法の存在を知っているのは日本語教育に関係するごくごく一部の人間だけです。普通の日本人にも日本語文法の存在を知ってもらいたいと願い、一般の人向けに新書として書き下ろしました。初版から13年が経ちましたが、いまだに売れ続け、15刷を数えるまでになっています。

 

 

6.『考えて、解いて、学ぶ 日本語教育の文法』(スリーエーネットワーク)2010年

 45歳で日本語教育の本格的な研究に従事するようになり、55歳の時に初めて出版した記念の書籍です。10年以上にわたって大学や民間の日本語教師養成機関で日本語文法を教え、こつこつ改善を重ねてきたものを一冊の書籍にまとめあげました。視覚的に理解できるようにイラストや図表を多用し、ユニークな視点からの解説を心がけました。どのようにしたら学習者にわかりやすく、文法理論を理解してもらえるかについての配慮をテキスト全体に反映させています。おかげさまで多くの大学や民間の日本語教師養成講座などでテキストに採用され、日本語教師をめざす人の文法書の定番とまで言われています。現在12刷となっています。

 

 

<共著>

7.『日本語教育能力検定試験 分野別用語集』(翔泳社)2018年 「第5章2(文法分野)」

 『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド』の姉妹本で、日本語教育の重要用語を分野別にまとめたものです。私は、文法用語の解説を担当しました。

 

 

 

 

8.『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド』(翔泳社)2017年 「第1部第1章(文法体系)」

 日本語教育能力検定試験の対策本としてはベストセラーであり、検定試験の会場にはこの赤い表紙の本をもつ人であふれるとまで言われています。通称、「赤本」と呼ばれています。この書籍の第4版と第5版で文法を担当しました。特に第4版では、オリジナルの解説で要点をコンパクトにまとめ、日本語文法の概要を説明しています。

 

 

9.「多文化共生社会と異文化理解教育」『井田好治先生米寿記念論文集』(東京教学社)2010年

 英文学者であった井田好治先生は富士フェニックス短期大学の教員に私を採用してくださった恩師です。新設された富士フェニックス短期大学は私にとって初めての教員人生の始まりとなりました。この本は井田先生の米寿を記念して、先生の教え子達によって作られたものです。ここに収められた論文では、社会人受講者に対する異文化教育の実践によって得た知見をもとに、多文化共生社会の実現にとって必要不可欠な異文化理解教育のあり方を論じていています。